2026.07.11 院長コラム
睡眠時無呼吸症候群の検査治療に力を入れています。
「いびきが大きい」「睡眠中に呼吸が止まっていると言われた」「朝起きても疲れが取れない」「日中に強い眠気がある」──このような症状は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)のサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。最も多い「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」は、眠っている間に舌やのどの組織が気道を塞ぐことで起こります。そのたびに体内の酸素濃度が低下し、脳は呼吸を再開させるために短時間覚醒を繰り返します。その結果、質の良い睡眠が妨げられ、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群は決して珍しい病気ではありません。中年以降では約10~20%の方に中等度以上の睡眠時無呼吸が認められるとされ、肥満のある方だけでなく、あごが小さい方や首回りが太い方にも多くみられます。しかし、自覚症状に乏しい方も多く、ご家族から「いびきがひどい」「呼吸が止まっている」と指摘されて初めて気づくことも少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群で最も問題となるのは、単なる「いびき」の病気ではなく、全身のさまざまな病気と深く関係していることです。睡眠中に繰り返される低酸素状態や交感神経の過剰な働き、血圧の急激な変動は、血管や心臓に大きな負担をかけます。
特に高血圧との関連は非常に強く、高血圧患者さんの約3~5割に睡眠時無呼吸症候群が合併していると報告されています。また、複数の降圧薬を服用しても血圧が十分に下がらない「治療抵抗性高血圧」では、約70~80%に睡眠時無呼吸症候群が認められるとされています。睡眠時無呼吸を適切に治療することで血圧が改善し、降圧薬の効果が高まることも少なくありません。
また、不整脈との関係も重要です。特に心房細動は睡眠時無呼吸症候群との関連が強く、低酸素状態や胸腔内圧の変化、交感神経の活性化によって発症・再発しやすくなります。カテーテルアブレーションや薬物治療を受けても、睡眠時無呼吸症候群を治療しない場合には再発率が高くなることが知られています。そのため、現在では心房細動の診療において睡眠時無呼吸の評価は非常に重要と考えられています。
さらに心不全との関係も明らかになっています。睡眠中に呼吸が止まるたびに心臓には大きな負担がかかり、心不全の発症や悪化につながります。反対に、心不全の患者さんでは睡眠時無呼吸症候群を合併している割合が高く、互いに悪影響を及ぼすことが知られています。適切な治療によって睡眠の質が改善するだけでなく、心不全症状や生活の質(QOL)の改善が期待できる場合があります。
このほかにも、糖尿病、脂質異常症、脳梗塞、慢性腎臓病などの生活習慣病や心血管疾患との関連が数多く報告されています。また、強い眠気や集中力の低下は交通事故や労働災害の原因にもなり、社会生活にも大きな影響を及ぼします。
当院では、ご自宅で普段どおりに眠りながら受けられる睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を行っています。小型の検査機器を一晩装着するだけで、呼吸の状態や酸素濃度を測定することができます。検査の結果、より詳しい評価が必要な場合には精密検査をご案内し、中等度以上の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、CPAP(持続陽圧呼吸療法)をはじめとした適切な治療をご提案いたします。
当院は循環器内科として、高血圧、心房細動、心不全などの診療にも力を入れています。これらの病気をお持ちの方で、いびきや日中の眠気、ご家族から無呼吸を指摘されたことがある方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。早期に発見し適切な治療を行うことは、睡眠の質を改善するだけでなく、心臓や血管の病気の予防や治療成績の向上にもつながります。
気になる症状がありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。