2020.11.15 院長コラム
人はカンガルーのポケットを持っていない
アラ還ですが、年と共に、いろいろ身体能力が低下したり、体の故障が出てきたりして、今まで高齢の患者さんからいろいろ伺っていた症状にいちいち身をもって納得することが徐々に増えてきました。昨年腰椎ヘルニアになり、症状は改善したものの、その後運動の際には十分ストレッチをしてから行うとか、ちょっと調子が悪いときには無理に腰に負荷をかけないとか気にしています。目は、当院開業後数年で老眼になり、その後老眼どころか近くも見えなくなり、どんどん眼鏡を変える必要がありました。いまは眼鏡で日常生活に支障はないが、やはり小さな字は見えにくい。TVで一時たくさんコマーシャルしていた拡大眼鏡、使ってみると大変役に立つことも身をもって知りました。尿の勢いがなくなって、トイレの回数が増えたと思っていたら、時にはトイレに行きたくなったら以前ほど長く我慢ができなくなりました。
その他もろもろ数えるときりがなく、当然のことながら若いときよりもいろいろ支障が出ております。すべてあらかじめ患者さんからいろいろ伺っていたので、「ああ、そろそろ来たか。」と平静心で老化を受け入れられております。患者様には、そういった意味でとってもお世話になっております。
能力が低下すること、不調が増えることは憂うべきことではありますが、いいこともいくつもあります。
①みんな平等に衰えている 私が患者様に教わった通り、みんな順序こそ違え、いろいろ不調が起こる。もちろん最後はあの世に行くわけですが、それも含めて、みんな同じなんだからお互いいたわりあっていこうと思える。優しくなれる。 若いお方、ご家庭で家族が耳が遠くなって意思疎通が難しくなったり、認知症でいろいろ失敗をしても、怒っちゃいけませんよ、いずれは自分も通る道です。
②もともと人間は身体障害者 当たり前のように手足を動かしてきましたが、脳梗塞になったらもしかして片足、片腕が動かなくなるかもしれません。それを身体障害と呼ぶのかもしれませんが、
でも想像してください。カンガルーが話せるとしたらこう言うでしょう 「お前たち、なんで体にポケットがついてないんだ?赤ん坊を入れてやらないと寒いじゃないか。しょうがないから赤ん坊を布でくるんでいるんだね。それじゃあ本当のスキンシップは生まれないんだよね。」
カモメが話せるとしたらこう言うでしょう 「君たちは全く空を飛べないんだね。道具を使って何とか飛ぶこともあるけど、器用じゃないね。」
魚が話せるとしたらこう言うでしょう 「どうしてあんたがたは水の上でしか暮らせないの?海の世界はこんなにきれいなのに。それに、何とか入ってくる人も、なんて無様な泳ぎ方なんだ。」
それぞれがいろいろな能力を持っていますが、それぞれが持っていない能力もあります。そんなことを考えると、体の一部が動かなくなろうが、目が見えなくなろうが、本来できなかったことが一つ増えるだけです。それまでと同様、その時の自分にできる能力を使って暮らしていくんですね