2020.11.14 院長コラム
糖尿病や肥満と戦う人たちへ
私が携わっている治療の中で、糖尿病や肥満の治療と、他の病気(高血圧や、高コレステロールや、喘息や心臓病などなど・・・・)との最も大きな違いは何だと思いますか?それは、後者はある程度食事や生活習慣が改善しなくても、何とか薬で病気を抑え込むことができると言うことです。それに比べると糖尿病と肥満は、生活習慣病と言われ、食生活を中心に生活習慣が変わらない限り、強引に薬でよくしてしまうことができない点が最も大きな違いです。たとえば糖尿病は、血糖の高い人に強引に強い薬で数字のつじつまを合わせようとすると、強烈な低血糖発作で倒れたり、血糖は下がったものの体重が増加したり、いくら薬を増やしても改善せずにがっかりしたりする、厄介な病気です。また、肥満も、がんがんダイエットをするとほぼそのうちリバウンドが来て、さらに悪い結果を招きかねない。 しかも悪意のある人たち(往々にして医者もそうです)からは、自己責任だとか、だらしないとか、意志が弱いとか言われる。他の病気とまったく同じ「病気」なのに、何か自分が悪いような責められ方をする。(高血圧や心臓病の人はそうそう自業自得とは言われないでしょう?) だが、ほんとうは糖尿病も肥満も、単に病気にすぎない。アプローチの仕方が難しいだけです。いわば「難病」であります。その難病に対して、「自己責任」と言い放つ医者は、治療の責任と努力を放棄しているかもしれません。他の多くの疾患において、治療の経過が二次元的に紙の上に書けるように悪化や改善を繰り返すのに比べて、糖尿病や肥満は、いわば三次元・四次元的に広がる病気です。時間軸や病勢(高血圧ならば血圧の数値ですね)の二次元に加えて、患者の精神状態やモチベーションや、治療に対する理解や反応や、医者の心理的介入、そんな要素が三次元、四次元的に広がってゆく。けむに巻いているように聞こえるかもしれませんが、そんな疾患です。難病であって何も不思議ではないでしょう?
2017/3/02