2020.11.14 院長コラム
人生に何かが足りないと感じている理由は、価値観と行動の間に生じた矛盾のためである(H.Smith)
内科医の扱う病気の中で、薬を飲むだけではなく、患者に多大な要求をしなければならない一般的な病気の最たるものは糖尿病だろうと思う。たとえば高血圧にしても高脂血症にしても、食事療法は大切なのだが、薬を服用すると何となくどうにかなってしまうので、少なくとも患者さんは切実な食事や生活の変化を要求されることは少ない。それに比して、糖尿病の場合は、症状がほとんどないのに、医者が「これを食べるな」「このように食べろ」「運動しろ」「規則正しい食事をしろ」「疲労や睡眠不足もだめだ」・・・・などと好き勝手なことを言う。もちろん患者さんたちも医者が善意で言っていることはわかっているはずなのだが、糖尿病という病気自体ピンと来にくい病気なので、どうにもがんばりにくい。せめて毎回外来出てくる HbA1cや血糖などといった数値が、わずかながら医者がうそを言っていないという証拠の品だ。とにかく糖尿病という病気は患者さんががんばりにくい病気だと思う。その、がんばりにくい病気にもかかわらず、初めからそれを受け入れてがんばれる人たちのグループがいる。偶然ではないと思うが、当院で見ているそのような方は社長さんである。社長さんのパターン患者「なに、糖が高いのか。カロリーが多いのか。体重を○kg減らさなきゃならないのか。」私「そうなんです。」患者「よし、そうしたらどうすればいい?」私「歩く量を増やしましょう。一日 30-60分です。食事は隣で栄養士が説明します。」患者「よし、わかった。」・・・・そうして、毎月みるみるデータがよくなってゆくのです。人にもよりますが、半年足らずで理想的なデータを達成するのです。それを見て、ニヤッと満足して帰るのです。達成感を感じているのです。
私にはまねができません。ただ、彼らは社員を管理するように自己管理もするのだろうと思います。会社を経営するように自分の体を経営するのだろうと思います。会社経営から逃げないのと同様に自分のからだの問題から逃げないのだろうと思います。見事です。
2015/11/6