2020.11.14 院長コラム
1台のぼろ車から
1年半ほど前に、一台のハイエースを購入しました。インターネットで探すと最低価格が30万円台のようでしたので、30万円台で探していたところ、運よく市内で見つかり、購入しました。12年間で34万キロを走行した車で、見た目には表面が何箇所か大きくさびて盛り上がり、その上からとりあえず塗装をしてあります。遠からず腐って穴が開くことでしょう。でもその他は意外ときれいです。泥だらけのオフロードバイクを運ぶために購入したので、見た目や乗り心地ははじめから期待していませんでした。 購入間もなく、バイクを乗せて走っていたら、バイクが傾いて窓に当たったとたん、窓全体が外れて外に落ちました。すぐに直してもらいましたが。また、乗ってみて、音がうるさい。ディーゼルエンジンだけではなく、車体がいたるところがたがた音がします。冬になるとしばしば運転席の窓が開かなくなったり、時に側面のスライドドアも凍りついて開かなくなります。エアコンは付いていますが夏はなかなか冷えず、冬は暖かくなるまでかなり時間がかかります。車内はたばこ臭さが強烈でしたので、何度も何度も洗剤と消臭剤で室内全体やエアコン内も洗いましたが、まだ臭さが残っています。 これは決して車の愚痴を言っているのではありません。特徴を話しているだけです。むしろ、この車を売ってくれたくるま屋さんには大変感謝しています。このボロ車が、いかに私に幸せを与えてくれているかを書きたかったのです。 我が家には3年半前に新車で購入したトヨタのオーリスという1500ccの車があります。とてもいい車です。この車はがたがたいったりエアコンが働かなくなったりドアが開かなくなったりはしませんし、匂いもありません。もちろん窓が外れたことはありません。でも、それが当たり前と思って乗っています。 ところが、ハイエースは、もともと考えうる最低に近い価格で購入したので、何があっても仕方がないと覚悟していました。100万円くらい出せば、かなり程度のよいハイエースは手に入ります。しかし娯楽のために100万円のセカンドカーを買うのは私にとってかなり大胆な決断が必要で、結局“安物買いの銭失い“のリスクを冒して安い車を購入したのです。もともと何があってもおかしくないと覚悟していたためか、窓が外れてもまたくっつけばOK、振動や騒音があっても34万キロ走っているのだから当たり前、エアコンの低調もドアも窓もまあこんなもんでしょう、といった具合に、何でも許せてしまいます。でも、とりあえずエンジンだけは故障なく走っています。 もともと期待していなかったので、購入して1.5年、きちんと走っていることだけでもう、とっても幸せです。明日もエンジンがかかったら、それだけでまた幸せを感じるでしょう。しかも、バイクを運ぼうと購入したのですが、大型ごみを捨てにいったり、大きなものを買い物したときに役に立ったり、視線が高くて意外に冬乗りやすかったりして、良いことずくめです。 この車でとても幸せ感が強いのは、ゼロから足し算でプラスの評価ばかりしているからです。マイナスはもともと覚悟していたのではじめから計算に入れていないのです。少しいいことに気づくたびに点数が上がるのですから、もう、素晴らしいとしか言いようのない車です。最終的に百点になるか、五百点になるか、点数は天井知らずかもしれません。 大げさではなく、おそらく私がスーパーカーを買ってもこんなに満足感は得られなかっただろうと思います。逆に、スーパーカーを買ったひには、置く場所はどうしようか、傷が付かないだろうか、洗車はどうしようか、盗まれないだろうか、などなど、不幸な心配ばかりが想像されます。また、少しでも不調になったり傷が付いたりしたらとてもいらいらしたり悲しくなったりすることでしょう。それは、多分スーパーカーという素晴らしい車の価値が高いため、はじめから百点なので、その後の評価はマイナスばかりになってしまう可能性があるからです。 つまり、言いたいことは、初めから百点だと百点を越えられないが、零点からのスタートには限りない高得点の可能性があるってことです。 これって、そういえば人間関係も含めてあらゆる評価にそんなところはあるかな?とにかく足し算で評価できると幸せになれますよね。 |
2013年02月12日 |