2020.11.14 院長コラム
お大事にをありがとう
オートバイに29年乗っているが、初めて骨折した。幸いにして折れたのは左足の腓骨という細い方の骨で、入院・手術は不要、固定だけということになった。ちょうどゴールデンウイークを迎える直前だったため、ゴールデンウイークは今まででいちばんおとなしい休暇になった。妻は「これはきっとご先祖様が守ってくれたのよ。大きな事故になる前に警告してくれたのよ。このままゴールデンウイークをバイクで楽しんでいたら大怪我をしたかもしれないわよ。」と、慰めるつもりなのか、暗にバイクに乗るなと言っているのか、わけの分からないことを言う。初めての骨折、初めてのギブスで、移動は松葉杖。久しぶりに患者さんの気持ちを十分思い出すことができた。すこし身動きがとりにくい状態だったが、これはこれで本当にゆっくりした連休を過ごし、たまっていた雑事を片付けた。1週間もすると松葉杖の使い方にも慣れ、日常生活でほとんどできないことはなくなった。ギブスは太ももまでなので、ひざが曲げられず運転はできない。しかしトイレもシャワーも日常診療も問題なく、水の入ったコップを持って松葉杖で歩き回ることもできるようになった。診察室で患者さんたちが私を見る目は十人十色で面白い。診察室に入ってくるなり元気よく大きな声で「先生どうしたの!」と屈託なく声をかけてくれる人がいる。そんな人はこちらまで元気になるようでありがたい。きっと彼は他の人にもいつも元気に接してあげているんだな。診察室に入って座って診察を受けている途中で私のギブスが目に入って、「どうしたんだろう・・・・?」と心配顔にはなるが、気を使ってあえて質問してこない患者さんもいる。そんな方は繊細でいつも回りの皆さんにの気持ちを考えてあげながら生活しているんだろうな。ある方は、途中で気がついてから葛藤が顔に書いているようで面白かった。「どうしたんだろう・・・?」「どうしたんだろうと聞いてみたいが、聞くのは悪いかな。」「骨が折れているのかな?」「もともと足が悪いわけではないのかな。」そんな自問自答が聞こえてくるようだ。彼は診察終了までずーっと私のギブスから目が離せないようだった。かわいい性格の方である。 「先生、バイクはやめなさい!危険だから。」と強く忠告してくれる方もいる。 ご自分の病状をどのように説明しようかと一生懸命の方は、一生懸命で私のギブスには気がつかないようだった(ギブスの上からズボンもはいているので)。その方は自分の体の変化を詳細に説明してくれるため、医者としてありがたい。その他いろいろな反応を見ることができた。多くの皆さんが診察室を出るときに「お大事に」と私に声をかけてくれる。立場が逆である。その患者さんたち、いつもこちらがお大事にと声をかけるときよりも元気そうに見える。なるほど医者が怪我をしているのも悪くはないのかもしれない。 |
2008年05月21日 |