以前に虹の色が7色ではなく、6色の国もあれば5色の国もあるという話を聞いて、なるほどそういうこともあるかと妙に感心したことがあった。色の語彙と言うのはわれわれが想像するよりも民族による差異が大きいようだ。 極端なところでは、色表現が白と黒しかないモノクロ写真のような言語も存在する。ある言語学者の研究によると、人間の認識しやすい色と言うのは決まっているらしい。あらゆる言語において、色の語彙が2種類しかないものは必ず白と黒、3色のものは白黒赤、続いて黄と緑が加わるそうだ。増える順番は決して逆にはならない。白黒、次いで赤がなくて黄と緑という4色のみの言語は決して存在しないと言うのだ。 白黒は、おそらく色があり、なしの2種類であって最も原始的な表現であることは想像に難くない。しかし次に必ず赤が来るというのは面白い。モノクロからカラーの表現へ進化した際の初めての色が赤である理由は血液の色だからだろうと想像するのは、私が医者だからだろうか。情報の伝達は、重要度の高いものほど上位にあるはずだ。生命にとって最も重要度の高いことは個体および子孫の維持であり、肉体の損傷を示す赤い出血は最大の情報の一つであろう。そう考えると3番目の色が世界共通で赤であることはとても自然なことに思える。世の中の多くの警告が赤で示されるのも納得が行く。赤はバラの色でも炎の色でもなく、血の色を示しているのだ。そう考えると、警察車両の回旋灯は赤だし、消火器も消防車も赤い(これは炎の色かもしれないが)。重要な警告は赤でかかれることが多く、学生が本やノートに線を引くのも元来赤である。 血の色が赤であることは皆さんご存知のとおり、酸素の運搬に鉄を利用しているからだ。鉄はちょっと面白い性質をもっており、酸素に結合しやすくかつ離し易い。しかも地球上に大変多い素材なので医学的には大変理にかなっている。しかし、もしも血液が緑色だったら、学生が本に下線を引くのも緑、パトカーの回旋灯も緑、もしかすると消防車も緑・・・・世の中の色はずいぶん違う色に染まっているだろうか? 2006年08月01日
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